タレメーノ・カクの高校留年白書&元芸人社会へ出る

笑われて、笑わせて、笑わせられず、笑う暮らし

履歴書が足りない

 履歴書をこしらえるというのはどういうわけか、楽しいものではありませぬな。履歴を披瀝したい人にとってはそれを書く作業は楽しいものかもしれませんが、あいにくとぼくの場合はそうではない。人間、ウソをつくというのは非常にストレスを抱えるようです。

 

 なにも、東大出てますとか、TOEIC満点ですとか、商社では営業畑におりましてなどと偽ることはありませんよ。出た学校を書き、入った会社を正直に書くだけなのですが、困ったことに、芸人を辞めてからの職歴がまあひどいもんで。

 あれ、みなさま、どうしてますでしょうか。1日で辞めたなんて会社のことはもう無視してらっしゃることとは思いますが、3ヶ月とか、4ヶ月とかいったような塩梅のやつは。ぼくの場合それがちと多い。いちいち書いてたんじゃあJIS規格の履歴書になんざ治まらねぇよって話なのです。見栄はありません。ただ、全部を書けないんです。

 仕方がない、職歴をいささか編集しちまおうってなことで、あれは無かったことにしよう、あれは働いたうちに入らねぇ、よし、5年やったことにしちゃおうだとかなんとか一人ブツクサ言いながら、パソコンに下書きをつくる。いつぞやの、出てもないアメリカの大学を出たと看板下げてた経営コンサルタントのコメンテーターの泣き顔を思い出しながら、ぼくも低い声で入社年と退社年、それから企業の名を唱えなながら清書の筆を走らせる。

 うん、こんな職歴、ウソじゃねぇか。でも、やってないことをやったとは書いてないからね、まあ、まあ、いいじゃねぇか。——と、こんなザマ。

 

 いざ面接に行けば、芸人だったことをまずは根掘り葉掘り聞かれて、好奇の視線もよくあるし、なぜか尊敬の眼差しを送ってくる面接官もいる。だいたい、好奇の方が受かって、尊敬の方が落ちる。こんなもんです。どっちが嘘つきかわかりゃしない。

 

 そして、在籍期間を偽った職務経歴を脳内リハーサル通り、あるいは役作り通りといいましょうか、まあこれを披瀝するわけです。

 

 まともにやってたんじゃあ、履歴書、何枚あっても足りやしない。しかし、手書きってのは、パソコンに打ち込むのとちがって、ウソがホントになるようで、少し怖いところもありますが、このストレスがやはり、生命力を強くさせるのかもしれません。

 人は何を見て判断し、何を見せようと判断するのか。

 「君はありのままでいいんだ」

 「あなたはそのままでいいのよ」

 そんな文句がお花畑のように咲き誇る昨今ですが、ありのままでいいわけねえだろう! そのままでどうするんだよ! となるのもまた、真実でしょうな。