読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

高校留年論

19歳で学ランを脱いだ僕から、君に告ぐ

留年とアルバイト

 アルバイト先に自分と同い歳の高校生がいる場合。その職場の先輩なり社員なり店長なりとしばしば交わされる会話がある。一年を通して折に触れあるのだが、なかでも春が近づくにつれてその頻度は激しく上がり、全員に同じことを聞かれては答える。実に拷問めいた時間だ。

 「◯◯君って△△さんと同い歳だよね? じゃあこんど卒業だね。春以降どうするの?」

 留年していて来年度もまだ高校生なわけだ。この問答。面倒で面倒で心はみるみる疲弊する。大人からしたら大したこととは感じないし、当事者でなければ「気にすることなんかないじゃん」「ダブったのはお前の問題なんだから、なんで周りが気を使ってそこまで考えて話さなきゃならんのじゃ」と言う話になるだろう。それでかまわない。本人からしたらそこにストレスを感じて、誰がどうではなく、内省するんですということがここでは言いたいだけ。とはいえ、店長にまでも「あれ、◯◯君も二月いっぱいで退職か〜」などと言われると、卒業予定は来年度なのに「そうなんです〜」と言いたくもなる。「留年してんの、面接ん時言ったじゃん! ジジイこのやろう!」と体内の慟哭は止まらない。

 同い歳の高校生アルバイトが自分と同じ高校でもあった場合はなおうっとうしい。

 「◯◯君って△△君と同い年で同じ高校なんだよね? △△君、修学旅行でこの日からこの日まで出勤できませんって言ってたけど、◯◯君シフト希望いつでも出れますってなによ〜。休みにしとくよ? それとも、修学旅行行かずにここで働きたいってことかな? それは助かるな〜!」

 さらに、アルバイト先が地元の場合は煩わしさに囲まれる。もちろん中学の同級生が来るような飲食店などはその精神的負担を想像するに難くないから避けるのだけれども、油断あるいは考えが及ばずにスーパーマーケットで働くことを決めてしまった場合、同級生はコンビニに行きがちだから来なくとも、その親が来る。

 「◯◯君、高校出てもここでバイト続けてるんだ〜! いまどこの大学なの〜?」

 「◯◯君、このあいだ自転車乗ってるの見かけたんだけど、なんで学ラン着てたの? 大学で応援団でもやってるの? うちの娘も大学でサークルが忙し……」

 「◯◯君はえらいね。なんでですかって、髪の毛も染めないでアルバイト続けてしっかりしてるからよ〜。うちの息子は高校出てすぐ頭茶色くしてね〜なんかチャラチャラしてこないだも……」

 とこんな具合。噂なんてすぐ広まるのだから、一回誰かに言ったら広めといてくれよと思うのがまあ人情ではある。が、他人に期待しているようでは人間まだまだ。留年していることなんて、所詮一般的ではなくって、当事者とその家族以外にはよく分からない非現実的なことなのだから、もうピエロにでもなって「そうなんです。ぼくいま◇◇大学の応援学部でアルプススタンド専攻してるんです〜。ゴール裏はちょっと軟派なんでね〜。下駄でも履いて、ススキでもあれば口にくわえたいくらいですよ〜」とか言ってればいい。おばさん達とまじめに話したところでどうにもならない。人目につかない職種もいいし、人目につく職種もいいし。みなそれぞれ自分が思うようにしたらいいわけだけれど、人間一つでは語れない。多面的な自分というものを認め、また作りながら、それをまるで他人のように客観視して、適当に楽しめばよろしい。